満月の夜に、君に会える。
僕らは約束した。あの夜、君の去ってしまった美しい満月の夜から、ずっと僕は待ち続けている。
河の水面を見つめ、そして、映る月を見つめ。
何度この河原で、この場所で、君を待ち続けているのだろうか。
そんなことはきっととてもどうでも良いことで、ただ僕は、こうして待っている時間、その間だけ君と繋がれているような気がしている。
この時間だけは、僕と君の時間なのだ。
たとえ君が目の前にいなかったとしても。
そういうものだろう。
月を見上げてみる。
満月のはずの今日の月は、厚い雲に覆われていた。
今にも降り出しそうな雨。
……時は過ぎていくのだ、こうしている瞬間も切り取って、永遠に保存しておくことはできない。
ただ、保存できるのなら、あの時を心で風化させたくなかった。
いろんな思いは時がそれを丸め、角を取っていく。突き刺すような苦しみも、はじけてしまいそうな喜びも、何もかも。思い出はそういうモノだ。
だけど、永遠に突き刺していて欲しい思いだって、絶対にあるのだ。