なーに、簡単なことさ。

 まず認める、自分はオタク的体質を持っていると言うことを。
 次に認める、自分は一家を持っていて、一応その中心にいると。
 しかしながら、自分はそうではないらしい。この家は確かに私名義のモノではなく、妻の名義によるモノだ。ただそれは、私がここに居着く前であったからと言う事由に起因していると思っていた。
 どうも妻の言によるとそうではないらしい。この家は、私のモノらしい。私はこの家に寄生して住んでいるただの人間であるようだ。私には、漫画本というのはこの上なく大切なモノである。小説も沢山読んだが、それ以上に漫画も読んだ。つまり、今の自分を決める要因の一つであると、勝手に思っている。ただ、それは間違えようのない事実であるとも思っている。
 今日、自分を決めたモノを売ってきた。その選別ははっきり言って自分を切り売りするのと同じであった。私の心に残る、それこそ聖書的なモノですら売ってしまったからである。理由はズバリ"あんたの漫画本なんてこの家のどこにも置くスペースはない"と言うことである。
 正直に言うが、手の届かない場所にあるのならば、たいした意味を持たないのである。しかしながら、もうそれらは円に変わってしまった。悲しいけど現実なのよね。どうしてそうまでして媚びを妻に売るのかですって? 簡単なことです、返るべき故郷が私にはもう無いからです。ここにいると言うことは、私にとってそういうことですから。
 ついでに宣言しておきますが、私にだって思うところはあるわけで、30年経ってどういう想いでいるのかなんて、解りません。まさか、山の方に言って蟹が食べたいというわけではあるまいしねぇ。